ソリッドモデル・フォーラム

製作技法や小技 => 懐かしいソリッドモデルの製作記事 => スレッド開設者: K_mars 投稿日: 10月 09, 2016, 08:22:36 午前

タイトル: F4B ファンタムⅡの製作 その(1) 1965年5月航空ファン
投稿者: K_mars 投稿日: 10月 09, 2016, 08:22:36 午前
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は じ め に
 最近のプラモの進出は目ざましく、われわれモデルマニアにとっては嬉しい限りです。
 それにひきかえ、数年前あれほど全盛をきわめたソリッドモデルが低調を伝えられ、各地のソリッドクラブの例会はあまりパッとしないのは残念なことです。
 先日、ある人に「もう数年したら、木を削っている連中はみんな人間国宝になってしまうでえ-」といわれて、ガックリしました。
 いままで、本誌々上でも多くの人たちがそれぞれ作り方を発表された割に、それを見て作ったと思われるソリッドモデルが発表されないのは、どういうわけでしょうか。
 いままで書かれた方は、多く各クラブのなかでもN0.1とか名人とかいわれる先生方が多いため、ソリッドはたいへん難しいと思っておられる方が多いのではないでしょうか。
 筆者は、ソリッドはそれほど難しいものではないと思っています。要は各人の技術を最大限に発揮したソリッドを作れば良いわけです。
 正直なところ、筆者もあまり上手な方ではありません。彩雲会には筆者以上の人が多いのです。しかし、作る意欲は負けないつもりです。諸兄も、もっと気軽な気持で木削りに精を出して下さい。
◎製作に入るまえにもう一言
 ソリッドモデルは実機の正確な縮尺模型というわけですが、1/50ではこれにも限度があります。資料のあまりない機体はもちろん、仮に正確な資料があっても、座席内部や脚の細部の表現はちょっと不可能です。
 自分なりに妥協点をみつけて、あまり外から見えないカ所や、どう見ても自分の手に負えない所(例えはヘリコブタのロータ取付部)などは、思い切って省略してしまいます。でないと、そのために行きずまって放り出す破目になります。
 「いかに実機に忠実に作るか」ではなく、「いかに実機らしくごまかすか」というのが筆者のモットーです。
 それでは、F4ファントムⅡを作ってみましょう。

図面と資料
 F4Cの図面は「航フ」1964年8月号に折込図が出ています。これは空軍型のC型ですが、海軍型のB型も外観上は同じです。(下図参照)1/50で作る場合はこの図面を約1.3倍に伸ばさねばなりません。
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 図面は、信用しすぎると失敗することがありますから、使用する図面は必ずアラ探しをやって下さい。

 写真にウソはありませんから、写真を基にして図面が正確かどうか調ベて下さい。8月号の図面も空気吸入口の正面からの形が少し違うようです。実機はこんなに上の方が狭くありません。初期の型にはこんなのがあるようですが、量産型は違うようです。
 機首両側面にある小さな空気吸入口の、側面から見た長さも少し長すぎます。実機は前脚支柱の少し前ぐらいまでしかありません。
 F4Cの図面の多くが胴体にスパロウミサイルを積んだ側面図になっているので、胴体自体の下面の線がちょっとわかりにくいです。これも写真を見て記入しておいて下さい。 もちろん、自分で図面が思うままに画ける人は、この必要はありませんから、最初に使用する図面が正確かどうか調べて、もし修正すべき所があれば直して、少しでも実機に近くしましょう。
 写真は各自手持の資料からできる限り集めて下さい。本誌でも沢山でています。筆者の調べたところでは下記の号にファントムの写真がありました。
 1964年3月、10月、11月、12月号。1963年2月、5月、6月、10月、12月号。1962年4月、5月、7月、8月,9月,11月、12月号。といったところです。
 細部の良くわかる写真は、工作のときに利用して下さい。細部がわからなくても部隊マークや記号などの参考になるものも、自分の作りたい部隊のF4Bを中心に集めておいて下さい。
 筆者の場合、これら資料の他に、筆者自身が昨年の3軍記念日に横田基地で公開されたときに撮った写真を利用しました。今年の3軍記念日も間近いので、機会のある方はぜひ横田や厚木に出かけて、F4Bの細部の写真をできるだけ沢山撮っておくとよいでしょう。
 実機より正確な資料はありませんし、"百文は一見にしかず"といいますから、ぜひ見に行って下さい。
工作道具
 筆者は家業が建具屋なので、友人から「道具が多くあってエエナー」とよくいわれます。なるほど、鉋やノミは多くありますが、ソリッド用の道具はたいして持っていません。
 ナイフ一つでもモックアッフを作る人が、筆者よりはるかに上手なのです。ドリルや木工用機械の良いのを持った人の方が良い作品ができるわけではないのです。
 ですから、諸兄も手持の道具を最大限に利用すべきです。
 筆者はカンナ1挺、ノミ2~3本、それにノコギリでモックアップを削ります。小刀はスジポリのときだけ使っています。
 刃物が良く切れると工作し易いわけですが、刃物をトグのが苦手の人も多いと思います。ソリッドで、刃物の切れ具合がそのまま作品に現れることはありません。
筆者の友人で、スジポリのときに10円の彫刻刀を買って、切れなくなったら柄だけ落下タンク用に残して棄ててしまう人がいます。F4Cでも、2~3本あればスジポリはできそうです。
 要するに、自分の使いやすい道具を最大限利用すればいいわけです。その気になれば、小刀、鉋、ノミ以外外でも、木工用ヤスリ、ガラスのかけらetc、何でも利用できます。
 うるさい脚の工作も、別にハンダに限りません。接着剤だけでゼロ戦や雷電の脚を作った人もいるのです。
胴体の工作
 組立図を見て下さい。ファントムⅡはわれわれソリッドマニアから見ると、なかなかうろさい胴体をしております。
 筆者はF4Bは2機目です。以前に作ったときは胴体を1本の朴の木から削り出しましたが、これは非常に手こずりましたので、今回は3部分にわけました。
 胴体中央部用に26mmx43mmx360mm1本、空気吸入口の部分用に15mmx31mmx200mm 2本が胴体の材料です。
 胴体中央部の幅はできるだけ正確にきめておいて下さい。そして、貼りあわせる部分の両面を、カンナでピッタリ合うようにあらかじめ削り合まっせて下さい。
 次に中央胴体の木に、図面から側面型を写して、側面型だけを削ります。本機の着艦フックは、いままでの海軍磯に較べると非常に大きいので、筆者はこの部分も木で作ってしまいました。先のワイア一に引っかかる部分は、後でブリキ板などで作って付けてから、パテで整形しますが、これは最後にやるので、ここではフらクの根元の部分を削り落してしまわない方が無難です。
 胴体後半はなかなか複雑な断面なので、3部分を接着してから削ります。側面形以外は削らないで下さい。
 中央部の側面形を削ったら、吸込口の部分の型紙を使って中央部胴体に接着面の位置を画いておき、その部分以外を整形します。胴体上面と機首部分を削るわけですが、後半の部分と胴体下面は角ぼったままの方が無難でしょう。
 同様に、両側面の吸込口部分も、そこだけ作ってから強力な接着剤でしっかりと貼り合わせます。
 充分に接着できたら平面形を削りだし、断面を丸めて行きます。F4B独特のエリアールの平面形に充分注意して欲しいものです。
 主翼をさしこむミゾは、貼り合わせるまえに工作しておいた方が良いでしょう。 空気吸入口はなかなかややこしい形をしていますが、図面と写真をよく見較べて削り出して下さい。
 筆者の場合、写真と断面図を参考にして削り出したわけですが、初心者や気になる方はゲージを各断面ごとに作って使用すればよいでしょう。
 断面で注意すべきは、下面にあるミサイル取付部の部分で、特に胴体後部は写真ではわかりにくいのですが、主車輪格納部から後は角ばっていますから、よく注意して下さい。
 要は諸兄が手持の道具をフルに活用して、写真と図面を首っ引きで削れば良いわけです。
 筆者の工作法は側面形などは図面より少し大きめに削り、ごく目の荒いサンドペーパー(50番程度)で整形しながら図面に合せます。そして、目の細かいサンドペーパーで表面を仕上げます。
 なお、排気口の部分は別に木を丸めて中をくり抜いて作ります。ブリキ板で作ってもよいでしょう。
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主翼の工作
 主翼は少し幅の広い板が入用です。木目の良く通った朴の木でしたら、青味がかった良質のものを用意して下さい。最初に型紙で翼の形をうつし大きく木取ります。
 最初に型紙で巽の形をうつし、2~3mm大きく木取ります。
 取付部の差し込む部分も一緒に作ります。この場合、できれば翼後縁の線の木目を合せた方がスジポリなどのときに有利です。前縁の部分の木目の方向なども色を塗るとわからなくなりますから、よく頭に入れておいて下さい。
 大体の巽厚を削っておいてから、断面図を参考に削るわけですが、図面の主翼断面図はあまり信用できませんので、主翼付艇の部分や前縁の部分のトンガリ具合を、写真で判断してから削ります。
 最近のジェット機の翼断面などはほとんど上下対称の断面に近いようです。ただし、最近の機体ではいわゆる鼻曲り前縁のものがありますから、やはりよく写真とニラメッコすることです。
 ソリッドがスッキリと見える条件の一つは、翼後縁をできるだけ薄く削ることです。ですから、後縁は木を電燈にすかしたときボンヤリ光が見えるぐらい薄く削らわはなりません。後緑がポッチリしては、ジェット機のシャープな感じはとても表現できません。
 筆者は翼はほとんどカンナで削ります。カツオブシを削る要領で、カンナを上向きに置いて固定し、主翼を手に持ってゴシゴシやります。大体削れたらペーパーを二つ折ぐらいにして机などの上に置き、翼を手に持って摩くわけです。
 後緑は薄くすると非常に弱くなりますが、色を塗るとしっかりします。傷がつきやすいので、大体削ってから取付位置をきめ、正確な平面にし最後に後縁の仕上げをしてから取付けます。

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